聚楽(じゅらく)壁をクロス張りの部屋にリフォーム
高松市にお住まいの方より、雨漏り修理のご依頼時に和室の聚楽(じゅらく)壁についてのご相談をいただきました。
築25年ほどで聚楽壁がポロポロと剥がれ落ちるようになったとのこと。壁をクロス張りにもできますよとご提案させていただいた所、施工のご依頼をいただき、和室の聚楽壁がクロス張りの部屋へと変わりました。
こちらがその時の施工の様子です。今回のご依頼では聚楽壁の上からベニヤ板を張ってクロス張りにしたのですが、ご希望があれば聚楽壁をメンテナンスして使用することもできます。
聚楽壁の強度自体に問題が無い時は補修のみを行うことも可能ですが、聚楽壁の強度が弱い時は一度全部剥がしてから塗り直しになることもあります。塗り直しの場合は全て手作業となり、職人による施工が必要なためコストもそれなりにかかります。
…と、ここまで書きましたが“聚楽壁”って何?と思われた方がいらっしゃるかもしれません。“聚楽”って難しい漢字ですよね。
今回は、聚楽壁ってそもそも何?漆喰や珪藻土との違いは?…についてご説明します!
本来の聚楽壁とは?
本来の聚楽壁は、豊臣秀吉の城があったとされる京都西陣の聚楽第(じゅらくてい・じゅらくだい)跡地付近でとれる聚楽土を使用した土壁のことを指します。聚楽土は限られた場所でしかとれないために今では大変貴重なものとされているのですが、聚楽土を使用して仕上げた壁はとてもきめが細かく、土の質感が上品で美しいことで知られています。
聚楽土に藁や麻、紙、スサ、砂、水を混ぜたものが聚楽壁ですが、別名で「京壁」とも呼ばれ、茶室や料亭、高級旅館の客室などにも使われています。
壁の作り方としては、まず柱と柱の間に縄で竹を編み込んだものを格子状に並べて下地を作り、その上から土壁を重ねて塗っていきます。
最初は粗塗り、その次に中塗り、そして最後に仕上げの上塗り…と合計3回塗り重ねるのですが、その3回目の上塗りとして聚楽土を使用した壁材を塗ります。つまり、壁全体が聚楽土でできているわけではなく、表面だけが聚楽土を含んだ壁ということになります。
塗装面の厚さは約2mmと薄く施工が難しいため、職人の高い技術が必要です。
こちらの写真は、聚楽壁からクロス張りの壁にリフォームされたお宅の天井を解体した時の様子です。
竹を編み込んだ格子状の下地が見えていますね。ここに土壁を重ねて塗り、最後に聚楽壁の壁材を仕上げとして塗ったものが壁として見えている緑の部分です。
現代の聚楽壁とは?
現代では聚楽土を使用していなくても、聚楽壁の風合いを再現している土壁のことを総称して“聚楽壁”と呼ぶようになっています。
様々な土地で採取された土の他に、檜の木粉や藁やスサなどを加えた様々な聚楽壁や、塗りやすくコテムラが出ないように接着剤が配合されているものも普及しています。
ですが基本的に自然素材を使用していることが原点で、和の風情を表現できること、手作業で塗られること、調湿機能や消臭効果があり耐火性が高いことなど、自然素材の良さを持ち合わせているものが聚楽壁の壁材として販売されています。
漆喰や珪藻土との違いは?
聚楽壁の主原料は土ですが、壁材としてよく耳にする“漆喰”や“珪藻土”は何でできているのでしょうか?
漆喰
消石灰(サンゴ礁などの石灰石を焼いて水を加えたもの)を主原料とした塗り壁材で、糊(のり)やスサを加えて水で練ったもの。
消石灰は二酸化炭素を吸収しながらゆっくりと石灰石に戻ろうとして固まっていきますが、石灰石に戻るまでには100年以上もの長い時間が必要です。その間ゆっくりと呼吸することが調湿機能となっています。
昔から湿度の高い日本の暮らしに欠かせない壁材として漆喰が活用されてきました。
珪藻土
藻の一種である珪藻(けいそう)という植物性プランクトンが化石化して堆積したもの。
目に見えない無数の細かい穴が空いていて、この穴が空気中の水分や臭い成分を強力に吸着します。調湿性や保温性、断熱性にも優れています。
どうやって壁材を選ぶ?
職人による塗りの意匠を楽しむならどの壁材がいいのか?調湿性、質感、価格の違いについてまとめてみました。
①調湿性の違い
調湿性は聚楽壁よりも珪藻土や漆喰の方が優れています。ですが一般的なビニールクロスと比べると聚楽壁の方が調湿機能を備えています。
②質感の違い
漆喰は滑らかな仕上がりに、珪藻土と聚楽壁はざらざらとした質感に仕上がります。質感が違うと触り心地や陰影のでき方、お部屋の雰囲気が変わります。
③価格の違い
漆喰、珪藻土、聚楽壁のそれぞれに沢山の商品があり、色味や塗りやすさ、強度、仕上げ方などによって価格が変わってきます。
どれも全て職人による手作業になるためにクロス仕上げよりは高くつきますが、自然素材が持つ味わいを楽しめる壁になるのが一番のメリットです。
まとめ
聚楽壁を始め、漆喰や珪藻土についての違いを見てみました。
聚楽壁は、土素材ならではの和の風情や防火性の高さを重視する方におすすめです。塗り壁の意匠に加えて調湿性や防臭も優先したいという方は、漆喰や珪藻土についても検討してみてくださいね。
逆に今回のお客様のように塗り壁をクロス(壁紙)に変えることもできます。塗り壁風のクロスも沢山種類があり、塗り壁に比べてコストが安くつく、メンテナンスが簡単…という点がクロスのメリットです。
お部屋の雰囲気に合った壁材を色んな角度から検討してみてくださいね!
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