引き続き、木田郡三木町のお宅の屋根板金工事の様子です。
スレート屋根を撤去し、さらにスレート屋根の下にあったコロニアル屋根(カラーベスト)も撤去した所までを前回お伝えしました。
既存の屋根材を撤去せずに、上から新しい屋根材を重ねて張る「屋根カバー工法」という施工方法があるのですが、こちらはすでにコロニアル屋根とスレート屋根が重なっていたため、これ以上屋根材を重ねてしまうと屋根自体が重くなってしまいます。
それに加えてメンテナンスをしていなかった期間も長かったため、一度全ての屋根材を撤去して下地の劣化具合を確認し、葺き替えることとなりました。
既存の野地板の上に合板を張っていきます。屋根材が下地から新しくなると安心ですね!メンテナンスサイクルも伸ばせます。
続いて左写真のようにルーフィング(防水シート)を張っていきます。
家の劣化を早める大敵は「水」ですが、屋根材の雨仕舞で防ぎ切れなかった水分を屋根の内側に入れないようにする役割を果たすのが、このルーフィングです。破れたり穴があいたりすると雨漏りにつながります。普段は見えない所だけにしっかりと張っていきます。
そして右写真のように、今回の新しい屋根材「ガルバリウム鋼板」を立平葺き(たてひらふき)で張って完成です。
立平葺きとは板金を縦に敷いていく方法で、屋根の頂点から軒まで何も遮るものがないために排水性能が高く、雨漏りしにくいというメリットがあります。
今回使用した屋根材「ガルバリウム鋼板」は、現在屋根リフォームの主流になってきていると言っても過言ではありません。外壁、屋根共に建材として多くの人に選ばれるガルバリウム鋼板の魅力をご存じでしょうか?
ガルバリウム鋼板が人気の理由① 錆びにくい!
少し難しいお話になりますが…
鉄を板状にしたものに、「ガルバリウム」と呼ばれる“アルミニウム・亜鉛・シリコンの合金”をメッキしたものが「ガルバリウム鋼板」です。
通常、金属に傷が付くとすぐに錆びるイメージがありますが、このガルバリウム鋼板にはなんと…「自己修復作用」があります。
こちらの図のように、ガルバリウム(画像の“めっき層”の部分)にはアルミニウムと亜鉛が含まれています。
亜鉛とアルミのそれぞれの特質を掛け合わせたものがガルバリウム鋼板なのですが、亜鉛、アルミそれぞれの働きをご説明したいと思います!
■亜鉛の役割「犠牲防食」
亜鉛には「防食作用(鉄を腐食させない作用)」があり、亜鉛自身が溶けることで鉄部分を覆い、錆びによる穴の拡大を抑える役割を果たします。この働きは「犠牲防食」と言われています。
そこで、この性質を生かして金属素材に亜鉛をメッキした建材「トタン」が生まれるのですが、亜鉛は時間の経過と共に溶けて無くなり、防食性を失ってしまいます。
防食性を失ったトタンは錆びやすくなるため、トタンのデメリットとして耐久性が低い、メンテナンスが短い…という点が挙げられています。
■アルミの役割「不動態皮膜」
アルミには、金属の表面(空気と接する部分)に瞬時に酸化物の薄い皮膜を作る「不動態皮膜」という働きがあり、絶えず表面に皮膜を作ることで金属を守ります。
この性質を生かして、アルミをメッキとして使用した「アルミメッキ鋼板」が車両部品や建材に使用されています。
■亜鉛+アルミで自己修復作用のあるガルバリウム鋼板に!
そこで亜鉛とアルミを組み合わせて、このガルバリウム鋼板が生まれました。
アルミだけでいいんじゃない?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、鋼板の錆びを防ぐには「犠牲防食」と「不動態皮膜」の両方が必要で、このバランスが崩れると耐久性や耐用年数が短くなってしまいます。
つまり、両方の含有率のバランスが大事なんですね!
実際ガルバリウム鋼板に付いた傷がどのように修復されているかというと…
ガルバリウム鋼板に傷が付いた場合
①亜鉛が酸化して溶け、傷の断面を覆う
②亜鉛の上から、さらに酸化して溶けたアルミが覆う
③絶えず傷が覆われている状態になり、長時間経っても錆が拡大しにくくなる
というように、素材同士の性質を組み合わせることで傷に強い金属建材が生まれました。化学ですね!
そしてこの耐久性の高さが次第に広まって世界中で認識されるようになり、今私達が建材として使用することができるようになりました。
ガルバリウム鋼板が人気の理由② 軽い!
建材自体がとても軽いのもガルバリウム鋼板の魅力の一つです。
屋根材が重いと家の重心が高くなり、地震が起きた時に大きく揺れて家の構造に負担を加えたり、倒壊の危険性が高くなってしまいます。
屋根材別に1㎡あたりの重さを見てみると、瓦屋根材が約60kg、スレート屋根材が約20kgですが、ガルバリウム鋼板は約6kgです。桁が違いますね…
建材が軽いほど地震の影響を受けにくくなります。
おすすめです!ガルバリウム鋼板
こちらのお宅はとにかく寒いという点がお悩みでしたが、ガルバリウム鋼板は断熱性・遮熱性・遮音性・メンテナンス性にも優れています。
近頃はデザインも豊富になり、沢山の種類からデザインを選ぶことができますし、カバー工法としても使用できるためメンテナンスの費用を抑えることもできます。
屋根のリフォームを考える時のために、ぜひ頭の片隅に置いておいていただきたい優秀な屋根材です。
次回はこちらのお宅の外壁を診断した時の様子をご紹介したいと思います!
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